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レーザーパワーと加工品質の関係について  その③

株式会社リンシュンドウのスタッフの岡本です
前回の「レーザーパワーと加工品質の関係について  その②」の続きです。

今まで①と②の確認で以下の点がわかっています。

・ 深く加工しようとすると、焦点距離から離れてしまうため、レーザー出力と加工速度は比例関係ではない
・ レーザー出力設定値[%]と、実際のレーザー出力値[w]は一致しない
・ 焦点距離を無視できならば、実際のレーザー出力値[w]と加工速度は比例関係にある

 


根本的に話としては、焦点距離の影響や、レーザー出力の設定値[%]では本当のレーザー出力値[w]が不明であるという事実があるものの、加工速度とレーザー出力[w]を等比で変更すれば、彫りの深さ(加工素材に作用する力)は同じである、といえます。

では次に、加工の深さではなく、加工仕上がりについて考えます。

理想的な話をすれば、加工は常に最高出力が得られる出力設定に固定しておいて、要求される加工内容にあわせて加工速度を調整する、ということになります。なぜならば、それが最も加工時間が短くできるからです。
もちろん、薄手の素材を切断したり、浅い彫刻が必要な場合は、逆に出力を下げる必要が出てきますが、いずれにせよ、「出来るだけ加工時間」を短くできることを最優先して設定値を決めることになります。

しかし現実には、彫りの深さだけではない、加工品質に影響する要素があります。つまり彫りの深さ以外の、加工速度やレーザー出力の上昇を制限する要因があります。

その③では、その要因を検証します。



① 細かいデータの切断加工


タイミングベルトでレーザーヘッドを移動させる機種は、機体サイズの大小に関わりなく、ある程度以上の速度で切断加工すると、たわみによってコーナーでダンピング(バックラッシュ)が発生します。
これは移動方向の変化が頻繁で細かいデータで顕著になります。

二層のABS板に薄く、速度を変えて、「切断モード」でマーキングします。彫りの深さは関係なく、純粋に゛「切断モード」でのレーザー照射の軌跡を確認します。

データはLaserCutで使用可能な線文字で、「12345467890」です。
各文字の高さは4mmです。



この文字列データを加工速度を変化させて加工し、仕上がりを確認します。
加工速度は10[mm/s]を最低値として、5[mm/s]刻みで変化させます。
レーザー出力値は、各速度で同じ程度の彫りの深さになるように調整しています。






結果

下の画像のようになりました。



結果を見ると、速度設定が10、15[mm/s]の時はデータ通りの加工になっていますが、20[mm/s]以上になるとふにゃふにゃし始めます。

35[mm/s]以上になると、ふにゃふにゃした状態でほとんど変化はなくなり、同じように見えます。
これは、直線移動の距離が短いために、35[mm/s]以上になると、加速から定常速度(設定速度)まで至らずに減速してしまうため、仕上がりが同じになると考えられます。実際に、加工時間を測定すると、35[mm/s]以上の設定では、どれだけ速度を上げても、加工時間を変化しません。


結論としては一目瞭然ですが、「切断加工の場合、速度を上げすぎると、移動の向きが変わると形が崩れる」となります。


ただしこれは、データ内容によります。上記では高さ4mmの線文字を使用したので、長さ1mm以下の直線が連続的に向きを変えて加工されており、細微なデータ内容といえます。


たとえば、円形のような曲線の場合は、形が崩れにくいです。

下の画像は、速度が10[mm/s]と50[mm./s]の場合の円形です。一番内側がφ5で、直径をmmずつ大きくしたデータを加工したものです。最も外側がφ50です。

速度設定 : 10[mm/s]



速度設定 : 50[mm/s]



一見、速度設定 が 50[mm/s]でも、10[mm/s]と変わりなく真円に加工されています。

しかしよく見ると、50[mm/s]の場合は、一部ふにゃふにゃしています。
これは、各円の加工開始-終了位置です。別の丸を加工後にこの位置にレーザーヘッドが移動して加工を開始するため、形状変化が発生すると思われます。

速度設定 : 50[mm/s]の部分拡大


円の加工は反時計回転方向です。


速度設定が10[mm/s]の場合は、同じ位置に変形はありません。



この検証から、切断加工の場合は、たとえレーザーパワーを上げても、それに応じて加工速度を上げて加工時間を短縮することはできない場合があることがわかりました。
もちろん、もっと遅い速度、たとえば1[mm/s]で切断していたものを、レーザーパワーを上げて、2[mm/s]で加工する、というのは今回の検証では問題になりません。
また、要求加工品質によって、細部は多少粗くても問題ないような加工は、速度を上げて加工すればいいと思います。





② ゴム印



「ゴム印」と銘打っていますが、ゴム印に限りません。彫刻したあとに、削りかす(燃えかす)や粉が残るもの全般にいえることです。
木材や樹脂などの粉が付着しないものは関係ありません。アクリル(キャスト)も加工面に薄く粉が付着しますが、問題ありません。ゴム板のように粉じんが発生するものを対照にします。

60W機でゴム印を作る場合、速度は100~150[mm/s]程度です。この速度では問題ありません。たとえば150W機を使用して、400[mm/s]程度で彫ると、うまく彫れなくなります。

ブログ②で使用したGS1490-130W (実測120W 弱程度の出力)の機体を使用して比較します。ブログ②で測定したように、出力設定が30%の時と95%の時がおおよそ2倍のレーザー出力になるので、それにあわせて、以下の条件でゴム板を彫り比較します。
加工モードは、傾斜彫刻です。走査間隔 0.025[mm]、傾斜幅 0.5[mm]、リペア感度 10 のゴム印の標準的な設定で行います。

① レーザー出力 30[%] 最小出力 12.5[%]  スピード 150[mm/s]
② レーザー出力 95[%] 最小出力 12.8[%]  スピード 300[mm/s]

※ 最小出力はゴム印としての仕上がりを見て調整しました。




結果

印面は「http://www.laser-machine.com」です。フォントのサイズ2.5mmの高さです。実際の文字高さは2mm前後になります。ゴム印としては小さいサイズの字です。



上の印面がスピード 150[mm/s]、下がスピード 300[mm/s]です。



彫りの深さは同じです。
150[mm/s]の場合は、彫刻面がなめらかですが、300[mm/s]はでこぼこしています。

着目点は下の青線で囲った4カ所です。彫刻面が盛り上がっているのがわかります。写真でははっきりわかりませんが、他にも細かいところで盛り上がっています。



水洗い前の画像と照らし合わせてみてもわかりますが、やはり盛り上がっていて、深く彫れていません。



もしかしたら、レーザー出力の一時的な変動で発生した可能性もあるため、もう一度同じ加工を行って確認しました。



2回目も1回目と同じ仕上がりです。


原因は明白で、スピードを上げると、削りかす(粉)がエアーで吹き飛ばされずに隙間にたまってしまい、それが彫刻面をでこぼこにさせる原因です。

これは彫刻の深さと密接に関係していて、彫りが深くなるほど、削りかす(粉)が多く発生し、また、それらが吹き飛ばされるのを妨げることになります。

今回は120W程度の機体で行っているのでできませんが、150W機を使用して、加工速度を同じ300[mm/s]で加工すれば、より深く彫れ、凹凸が顕著になります。またスピードを上げて400[mm/w]で加工すれば、やはり、凹凸がひどくなります。


また、ゴム印とは別の、削りかす(粉)が発生するものとして、牛角印材があります。



これも、出力とスピードを上げると、適切に彫れなくなります。



結論としては、削りかす(粉)が発生する加工素材は、その影響によって、彫刻スピードを上げられない場合がある、ということになります。
ただ、この削りかす(粉)の問題は、吹きだまりの発生が様々な要因で変化するため、一概にどのような加工設定で発生するか予測できません。現状わかっている吹きだまりの発生を左右する要因は以下の通りです。

・エアーの状況 : レーザー照射口から消炎エアーが吹き付けられますが、完全に垂直ではなく、また、エアーコンプレッサーの状態、エアーホースの経路などにより、風量も変化します。エアーの状態により、吹きだまりの発生状況が変化します。

・レーザー光路 : レーザー照射光で照射されるレーザー光は理想的には垂直ですが、若干傾いている場合もあります。この微妙な傾きの差異は、加工素材のレーザースポットの位置が変化することを意味します。
調査をした結果、上記の「エアーの状況」とレーザースポットの位置の兼ね合いによって、吹きだまり状況が変化することがわかっています。

以上の2点と、レーザー出力設定値が実際のレーザー出力と異なっているという点から、異なるレーザー加工機機体で、同一加工設定・同一素材・同一データで加工しても、同じ結果にはならないと考えられます。

もちろんな、データ内容・加工設定によっても吹きだまりは変化します。




まとめ



「加工設定のスピードを2倍にした場合、出力も2倍にすれば仕上がりは同じことですか?」の答えですが、

理論的には(彫りの深さは)同じです。
しかし、加工設定値と実際のレーザー出力値は乖離しており、また、加工状況によって仕上がりが異なる場合があるので、実機で試し彫りを行って、要求加工品質を満たす加工設定を決める必要があります。
加工設定の数値から単純に比率で計算して設定値を決めても、思ったような加工結果にならない場合があります。

です。


より厚い素材を切断する、あるいは、より深く彫刻するために、高出力のレーザー加工機にリプレイスするというのは理に適っています。
しかし、加工時間の短縮を意図して、高出力レーザー機に乗り換えるのは、事前に検討が必要です。




追記

お客様から、〇mm厚の〇〇という素材を切断する加工設定を教えてください、〇〇という素材を〇mmぐらいの深さで彫刻する場足の加工設定を教えてください、という質問がよくありますが、これらは答えるのが困難です。

取扱説明書にも「目安」として素材ごとの設定表を掲載していますが、「この設定でとりあえず試し加工してみて、仕上がりを見て調整してください」程度のものでしかありません。

取扱説明書の設定表の数値で適切に加工できなかったから機体に問題がある、ということにはなりません。

今回は「レーザーパワーと加工品質の関係について」でしたが、他にも加工品質に影響を与える要素はあり、とくに、焦点レンズ、反射鏡の汚れというのは、彫りの深さに直結します。

加工設定は、お客様が使用する機体・加工素材・データで、実際に試し加工を行い、決定することが必要です。

その中で、速度を上げると、仕上がりが汚くなる場合があります。思っているよりも深く彫れない、切断できない、ということもあります。出力と速度のバランスを取って適切な加工設定を見つけることが重要です。




これで、「レーザーパワーと加工品質の関係について」シリーズは終了です。






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